鍋の季節。
白菜がどこにも売ってない。
そんなバカな。何回幹を横断しても、首を傾けても現れることないフォルムよりスジ〜っ感じの白く気泡だらけのような香り。白菜。
生でカジル週間は、都電育ちの僕にはないけど、甘いという噂は西のほうに住んでいる、お餅おばさんから毎年聞いている。もちろん噂っぽく。お餅おばさんは、白菜で餅を挟んで海苔で巻く、鏑木焼きがとても上手で、しかも食べられない。白菜の繊維の方向がどうも苦手でっていう。それは、食べ始めの一口目の向きを変えるとかそーゆーことではないらしいから、いつもお餅おばちゃんのまわりの人たちだけ食べる。お餅おばちゃんは、焦げ茶色のきな粉に餅をちょんちょんしながら舐める。舐めて、飲む、舐めて飲む。あんまり、よくないよ?って言ってもどへへへ。って飲む。
なんで焦げ茶色のなのって聞くと、これが本当のきな粉なんだよって教えてくれる。
本当っていみがわからないのか、本当のきな粉をしらないのか。お餅おばちゃんといるときは、たいてい僕は暇だから、そんな言葉をひっくり返したり、伸ばしてみたり、噛んでみたりして、味気ない、いや、もともと味なんて期待はしていないけど、もしかしたら、時間が少し多めに進んでくれるんじゃないかってチラチラ時計をみながら、ふけっていたりする。
今年は、とてもいい香りがした。
たぶん、あの子なのだろう。
少し離れているけど、それでも、きっといい香りだ。それだけは、なぜか伝わってきて、鼻の先がジンジンする。